cyciatrist 自転車と精神科医療とあとなんか

ボストン留学帰りの精神科医。自転車好き。

3年間アメリカで生活していた時の英語勉強法

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3年間アメリカに留学して住んでいましたが、渡米当初は英語はからっきしでした。もう、買い物もおぼつかないレベル。それでもその後の3年間でなんとか英語を進歩させることができ、途中からは日本からの奨学金ではなく現地で研究者としてお給料を受けることができました。

僕は初めは日本の教授からの紹介で研究室に配属されたのでTOEICTOEFLは受けていません。なので、点数で自分の英語の実力を示すことが出来ないのですが、3年間で英語でのlabo meetingはちゃんと資料を整理しておけば問題なくこなせる、ニュース等はほぼ完璧に聞き取れる、会話は1対1ならかなり流暢に喋れる、レストラン等では困ることはない。という程度にはなりました。

逆に、ドラマとか映画はまだ良くわからないところがあり、会話は数人でのチャットはきついと感じることは最後までありました。あと方言とか訛りがきつかったですね、意外にアメリカも地方によって訛りがあるんですよね。

BostonでのEnglish Learning - cyciatrist 自転車と精神科医療とあとなんかで書いたように、ボストンではフルタイムワーカーやフルタイムスチューデントのために英語学習リソースが少なく、自習をかなりやらなければなりませんでした。結論としては結局自習こそが一番大事だと思ったのですが、すごく苦労をして、いろいろ考えながら英語を勉強したのでそれについて記録しておきたいと思います。

 

英語学習で強調したいのは

1. 英会話はスポーツと捉える

2. one methodだけでは完成しない

3. 得手不得手があることを理解する

ということです。

 

僕のオススメする勉強法は結局はかなりの努力量を要します。僕は英会話はスポーツと同じで才能と努力が必要なものだと考えています。なので、だれでもすぐに英会話が上達するようなイージーな勉強法を求めている方はこのエントリを読んでも得られるものは少ないかもしれません。

 

日本で受けた英会話教室は意味が無かった

渡米前にマンツーマン形式の英会話教室に1クール通いました。結論から言うとこれはまったく意味がありませんでした。 本当の初心者が「英語に慣れる」という意味で通うことには意味があるかもしれません。また、英語の中上級者が「足りないところを補う」という意味で通うのも意味があるかもしれません。しかし、初中級者がただなんとなく英会話教室に行って、英語話者と1時間話して帰るだけでは英語や英会話はほとんど進歩しません。しかし、後に述べるようにネイティヴスピーカーと話す教室は英語を全体的に改善するのに必須の要素です。「通っている」ということに満足してしまわず、使い方を考えましょう。

 

受験英語学力は明らかに重要

受験英語は英会話には役に立たない。日本人は文法や難しい単語は知っているが会話はできない。他の国の人たちは文法なんか習わなくても英語をしゃべれるようになっている。だから、受験英語をやらなくたってしゃべれるようになる。」これらはずっと指摘されていることです。しかし、僕はこれは大きな間違いだと思っています。日本以外の国の方たちが日本人ほど文法を勉強せずに英語を話せるようになっているのは事実だと思います。しかし、日本人はやはり文法を含めた受験英語的勉強をきちんとやらないと英語を話せるようにはならないと思います。

その理由は英語と日本語の言語的距離の遠さです。こちらで紹介されている英語話者に対する言語習得難易度はよく取り上げられます。これによると英語話者が日本語を学ぶのもとても大変なことで、おそらくその逆も真なのだと思います。ヨーロッパ言語などと英語は基礎となる文法の法則などで日本語と英語より共有するものが多いため、英語話者はヨーロッパ言語の方が学びやすく、その逆も真でしょう。ヨーロッパ言語等の話者は英語話者を話すときには母語で培われた脳の能力をある程度自然に利用できるのに対して、日本人はほとんど日本語で発達した脳の能力を利用できないのではないでしょうか。ですから、日本人は文法等から学んで、英語を「頭で」理解する勉強法も必要になると思います。

英語の勉強じゃなくて「コミュニケーション」の勉強も必要

とはいえ、やはり「英会話」は受験英語とは異なるものです。「英会話」は受験英語よりも瞬発力が必要で、臨機応変さが必要で、生きた相手がいる、という違いがあります。しかし、これはなぜそのように受験英語と異なるのでしょうか?それは英会話がコミュニケーションのためにあるからだと思います。

そもそも、皆さんが英会話を学びたいと思ったのはなぜなのでしょうか?英語話者と話したい、コミュニケーションをとりたい(とらなければならない)と思ったからではないでしょうか。これを達成するのであれば、極端ですが、英語話者に十分理解してもらえるくらいジェスチャーがうまくなれば英会話を上達させる必要すらないかもしれません。逆に、どんなに文法を詰め込んで、たくさんの英単語を暗記してもコミュニケーションのツールとして使用できなければなんの意味もありません。受験英語で培った文法力や語彙力を基礎としてコミュニケーションツールとしての英会話を学んでいきましょう。

 

テンポのためなら単純化、陳腐化も必要と理解する

英会話はコミュニケーションツールということを強く意識すべきという話をしました。コミュニケーションには会話の内容のみではなく、テンポや量のコントロールも必要になってきます。日本語であれば皆さんは「『今の総理大臣をどう思いますか』という質問にできるだけ多くの返事を考えてください」という問いに、すばやくたくさんに返事が思いつくでしょう。しかし、英語ではどうでしょうか?たくさん思いつく人でも日本語と同じくらいすばやく思いつくということはないはずです。では、実際に『今の総理大臣をどう思いますか』ということを会話の中で聞かれたとします。皆さんはどう答えるでしょうか?

日本語では好き嫌いから政治判断への賛成反対までさまざまな内容の話題を即座に返答できると思います。しかし、これが英語で聞かれたとなると、英会話中級者まででは返事の内容をいろいろ考えてしまってちょっと詰まってから返事をすることになってしまいテンポを崩すことになってしまいます。それであれば、一言目の返事の内容は「I like him」などの非常に単純化してしまったものとし、表情やその後の話のつなげ方で情報を増やすようにしたほうが良いかもしれません。そうすればテンポを崩すことなく、会話自体の内容としては乏しいものとなってもコミュニケーションとしては豊かなものが行える可能性があります。

 

英会話はスポーツと捉える

さあ、このコミュニケーションツールとしての英会話とはどのようなものなのでしょうか。ここでは英会話はスポーツだと捉えてください。英会話は会話相手という対戦相手がいるスポーツなのです!英会話を勉強と捉えてしまうと、どうしても受験勉強的なものとして捉えてしまったり、逆にライフハック的な方法に頼ったりしてしまうことになりがちです。ここで相手のあるスポーツとして捉えるとうまくいくのだと思います。

例えば、スポーツの例としてサッカーで考えてみましょう。サッカーをするのに戦術本や技術本を何冊も読んで暗記することから始める人はいないでしょう。また、サッカーがうまくなるには、単に自分の技術を向上させることだけではなくてフェイントや戦術で相手を欺くことも考えるでしょう。さらには技術を磨くに当たっては試合で使えない技術を磨いてもしょうがないので、試合に必要な技術が何かと考えるでしょうし、練習等の目的は最終的には試合に勝つことだということも考えるべきでしょう。

英会話も同じです。英語がうまくなるには、本に頼って勉強するだけではなく、スピー○ラーニ○グのようなone methodに頼るだけではなく、発音だけを上達させるだけではないのです。英会話は、会話において相手をどうコントロールするかということも含めた複雑なものであり、英会話には英語話者とコミュニケーションを成立させるという目的があることを理解して勉強すべきだと思います。また、英会話を相手のあるスポーツと捉えると英語話者との会話はスポーツにおける「試合」のようなものだと思います。「試合」ではどんなにきれいなフォームでボールを蹴っても、どんなに決まった型を出しても、「勝たないと意味がありません」。英会話で勝つ、とはコミュニケーションが成立するということです。どんな形でも良いから「試合に勝つ」=「コミュニケーションを成立させる」ということを目標にすべきです。

 

one methodでは完成しない

サッカーがうまくなるには一生リフティングだけやっていればいいとか試合だけやっていればいいと主張する指導者はいないはずです。サッカーをうまくなるには初級者用の技術本を買ってよんだりスクールに入ったりして、初歩的な練習から始めて幾つかの練習法を組み合わせて試してみると思います。英会話も同じだと考えてください。

英会話は相手のいる複合的なスポーツであり、「リフティングだけやればよい」というようなone method的練習は、必要ではありますがそれのみでは最終的には絶対に向上しません。受験英語という座学を基礎にして複合的な練習を繰り返して向上していくものだと考えてください。

 

自分で勉強しないとダメ

良く、「留学をすれば英語が喋れるようになる」と安易に考えている方がいます。これは絶対に嘘です。上のスポーツの例で言えば、まわりにいくらサッカーの上手い人がいても自分のサッカー技術があがるわけではありません。そのうまい人達と切磋琢磨し、自分で工夫・努力して技術は上がっていきます。英語力もおんなじです。留学は周囲に英語話者しかいない状態になるので、英語を勉強するもってこいの環境です。しかし、それはその場にいれば英語がうまくなるという意味ではありません。留学は英語を学ぶ最高の機会を与えてくれ、英語ができないと不便な生活となるので自然と努力をするようになりますが、勝手に英語を上達させてはくれません。留学をして、その上で自分の英語力を高める努力をしてください。

 

普段の会話は「練習試合」

みなさんが「英語を勉強したい」と思う理由はなんでしょうか?外人の彼女がほしい?プログラマーとして大成したい?海外で仕事がしたい?いろいろな理由があると思います。それぞれの理由において「英語で女性を口説く」「英語でディスカッションする」「英語で就職の面接をする」などというとても大切な状況が想定できます。この場面での英語でのコミュニケーションの成立・成功があなたの英語の勉強をする当面の目標です。この状況を「大きな大会の決勝戦」と捉えましょう。それまでの英語での会話は「決勝戦までの練習試合」です。多くのスポーツチームは目標とする大きな大会の前に、小さな大会に参加したり、練習試合を組んだりします。これはなぜでしょうか?これは大きな試合に望む前に、弱点や問題点を洗い出したり、自分たちの力を客観視したりするためです。英会話でも同じように捉えましょう。日々の親しい友人等との英語での会話は大事な練習試合です。うまく行ったこと、行かなかったことを洗い出して、反省するようにしましょう。

 

弱点を把握して「メソッド」を組み合わせる

さて、弱点が洗い出されたら、それを克服する練習が必要です。自分で必要だと思った分野について以下のような英語勉強メソッドを使って勉強しましょう。メソッドは特別なものである必要はありません。

リスニング:ニュースや映画などを聞く。実は僕はあまりやりませんでした。聞くだけでは英語力の強化に結びつかないと思ったからです。でも、多くの英語勉強メソッドでは取り入れられています。リスニング力に直結すると思われますが、力にするにはかなり集中して聞く必要があると思います。僕はむしろ英語に慣れるという効果と、英語で話す話題を知るという効果があると思います。

ディクテーション:リスニング力に直結します。繰り返し勧められている方法ですが、間違いなく力になります。

シャドウイング:リスニング力、スピーキング力に直結します。これも繰り返し勧められている方法ですが、間違いなく力になります。

瞬間英作文:スピーキング力、文法力が身につきます。高い効果があるメソッドだと思います。

リーディング:英語の本をよむことは文法力、語彙力、言い回しを増やすことなどにつながります。また、アメリカ英語では独特の言い回し、イディオムを多用する人がいます。そういった言い回しやイディオムへの対策になります。また、英会話はコミュニケーションなので教養は重要です。僕は会話の中で「ドロシーみたいだね」と突然言われて面食らったことがあります。友人の中にドロシーという方はいなかったのですが、よくよく考えるとオズの魔法使いのドロシーのことを言っているのだと気づきました。教養は重要です。

音読:学校英語で多用されるメソッドですが、きちんと目的を持ってやると効果はかなりあると思います。スピーキング力や文法力、英語のリズムに慣れるという効果があると思います。

暗記:短めの文を暗記して空で言えるようにします。これを地道にやると会話力は確実に上がっていきます。武道の「型」のようなものです。

発音:表情筋の動きから、口の形、舌の動かし方などを勉強し、練習します。唯一、ネイティブの先生の助けが絶対に必要な分野です。最終的にはしゃべれない音は聞き取れません。日本人が苦手な分野ですが、避けては通れません。

非ネイティブとの会話:留学先での学校で生徒同士での会話はよく用いられる方法だと思います。同レベルの英語勉強者同士で話すのは安心感もあり話しやすいと思いますが、僕はおもったより効果が薄いように感じました。お互いになまりが強く、聞き取るのに苦労してあまり進みませんでした。自分より英語力のあるスペイン語圏の人と話すのは効果があると思います、スペイン語圏の人は非常に文法がシンプルで発音も聞き取りやすく、こっちのことを考えてゆっくりしゃべってくれます。

ネイティブとの会話:これは「練習試合」です。これ自体で英会話力が一気にあがるということはありません。ここで苦労して、自分の弱点がどこか洗い出していきましょう。特にたくさんの人数のネイティブとのチャットはあっちからこっちから会話が起こって初めは全くついていけないと思います。恥をかくこともあるかもしれませんが、自分の力量を知ることにつながります。

英会話講師とのマンツーマン授業:意外に効果が薄い方法だと僕は感じました。言われるがままテキストをやっていても効果は薄いと思います。英会話講師とのマンツーマン授業は普段から勉強していて疑問に思ったり、引っかかったことの解決に使うべきだと思います。あるいは、今後の勉強のしかたの指導などを受けるのも良いかもしれません。また、特に発音練習はネイティブ講師の指導がかかせません。

英会話講師とのフリートーク:ネイティブとの会話が「練習試合」とするとこれは毎日の練習での「ミニゲーム」でしょうか。英語で話す話題、リズム、「型」の効果などを確かめながら磨くことが出来ます。たくさん質問をするようにしましょう。疑問文は日本語と大きく語順が違うため日本人が苦手な文です。講師であればキチンと答えてくれるはずですから、ここで練習しておきましょう。

 

これらのメソッドを、自分が足りないと思う分野のものを組み合わせて、毎日勉強しましょう!

以下に、受験英語で一定の英語力がある人が、そこから英会話力を高めるために僕が良いと思う勉強スケジュールを書いておきます。これを半年から一年やれば相当会話力が上がると思います。

平日:NHKラジオのラジオ英会話を利用。全文をディクテーション。すべての単語をディクテーションで拾えたら、全文をシャドウイングシャドウイングで全部ついていけるようになったら全文暗記する。暗記したらところどころの単語を変えてみて(He→youなど)、別のストーリーにしてみる。さらに元の文の発音で自信がないところは発音記号を調べて口の動きを確かめる。これだけやると1時間半くらいはかかると思います。

オンライン英会話で30分-1時間フリートーク

週末:マンツーマン型の英会話学校でネイティブ教師と授業。平日に調べて自信のなかった発音を正しいかどうか確かめてもらってなおしてもらう。また、その発音の練習法を聞いて平日の練習に活かしていく。英語の本を読んだり、映画をみたりもしてみる。

これくらい勉強すると英会話力はかなり上がると思います。また、これをベースに自分の足りないところを強化したスケジュールをいろいろ考えてみてください。

 

最後に、これまではてブで眺めていて、ちゃんと効果がありそうだなーと思ったエントリを上げておきます。皆さん、がんばってください! 

www.outward-matrix.com

lifeiscolourful.hatenablog.com