cyciatrist 自転車と精神科医療とあとなんか

ボストン留学帰りの精神科医。自転車好き。

築地の移転問題からみるオリンピックの必要性


Olympic Rings / Oliver E Hopkins

東京オリンピック、徐々に話が現実化してきましたね。2020年といえばあと4年!今年ブラジルのリオデジャネイロで開催されて、その次です。

石原慎太郎前都知事が強力に推進して開催に立候補、この時から様々な議論がされていて、本当に東京での開催が必要なのかという疑問が常に呈されてきました。

今回滝川クリステルさんのすばらしい「おもてなし」スピーチで東京に決まりましたが、招致をがんばっていた猪瀬直樹東京都知事が不透明な借入金問題で辞職され、ザハ・ハディッドさんのデザインの競技場が建設費の高騰で白紙になり、佐野研二郎さんのデザインのエンブレムがパクリ問題で白紙になりました。こんなに始まる前からモメるのもなかなかないことではないでしょうか。

僕は東京に住んでいることもあって、石原都知事のオリンピック招致の話がでたころからあまりオリンピック開催に前向きな気持ちはありませんでした。「すごく混んで通勤が大変になるよ、、、」というツマラナイ理由です。しかし、オリンピック招致派のいうことも一定には理解出来るという立場でした。

オリンピック招致派は多くはオリンピックを招致する理由として

1. たくさんの人がオリンピックを見に来て経済効果がある

2. 首都高やその他の老朽化したインフラの再開発ができる

という理由を挙げます。「オリンピックでお金が稼げるし、準備のためにお金使わなきゃだけど使った分のインフラはオリンピック後も使える」というやつです。それぞれに「本当は経済効果なんかない」などなどの反論はあるのでしょうが、僕はおおむね理解出来る理由だと思っていました。なので、東京が一時期混むのが嫌だけど、まあ「しょうがないかな」というぐらいの消極的な姿勢でオリンピックに賛成していました。しかし、友人と築地の移転問題について話していた時に、「あ、これはオリンピックやるほうがいいんだ」と思い直したので、その理由を書いておきます。

 

友人から聞いた築地卸売市場の移転問題

築地卸売市場は「施設が老朽化」していて「衛生管理が困難」なので現状のままでは継続が困難だが、「あちこち複雑に建増しなどしているので細かく修復することができない」ので「移転が必要」だということです。これが移転が必要な理由とされています。

僕はこれまで、「政府は移転を推進しているが、卸売市場のひとは築地にとどまりたがっている」と理解していたのですが、どうもそうではないようです。友人が言うには「上記の理由は市場を利用する人みんなが理解している。みんな移転の必要性はわかっているんだけれども、そのタイミングやどこに移転するかでこれまで話が決まらなかった」ということだそうなのです。築地に住むが直接は築地卸売市場で勤めているわけではない友人の話です。もしかすると不正確かもしれません。しかし、これを聞いて「あ、オリンピックって必要なんだ」と僕は思いました。

 

全員を納得させる方法はない

結局、オリンピックなどの「どうしようもなく来てしまうイベント」がないと物事が決められないということだと思います。世の中には総論賛成各論反対で「やらなきゃいけないのはわかっているのに前に進められないこと」が数多くあります。築地卸売市場をここで例にとりましたが、首都高でも「工事にすると一時通行止めになって大変だから」などの理由で老朽化したままビクビクしながら使っているところもあるかもしれません。全員を納得させる形で物事が進められることは、インフラや再開発のような大きな事業になると不可能です。おそらく東京中に全員が納得出来る形が取れないからそのままの不便な形で取り残されているところがあると思います。

今回のオリンピックでは「もうオリンピックきちゃうから、完璧じゃなくても全員が納得しなくても決めてしまおう!」とそういったところにメスを入れることができるかもしれません。こういった定期的に来てしまう大きなイベントは物事を決めるのに必要なのではないかと思いました。オリンピックというお祭りは、世界的なイベントでブランド力があり、世界中から人が来るので「おもてなし」として素晴らしいものにしたいと当然みんな思います。そういうみんなが同じ方向をむいた状態を利用することで、各論反対を閉じ込めて東京の大きなリモデリングがなされるのかもしれません。僕はそれも必要なことだと思いました。そのなかで押しつぶされる小さな不幸が多くならないように願うばかりです。