1945年以降に精神科で起きた10個の重大な変化
精神科や脳科学については近年様々な進歩があると報道されますが、実態はどうなのでしょうか。少なくとも僕は10年以上精神科医として仕事をしてきて、「すくなくともこの10年は大きくは変化していない」と感じています。その中で気になった記事です。
History of Psychiatryという雑誌があるというのも驚きですが、その雑誌の25周年記念の記事だそうです。
イリノイ大学の歴史学教授であるMark Micale氏によると
1.1950年代の精神薬理学の革命
2.脱施設化
3.精神分析学の衰退
4.精神療法の精神科医から医学の訓練を受けていない人たちへのシフト
5.ビッグサイエンスの台頭
6.1980年代からのMood-stabilizingやMood-enhancing化合物の発展と普及
7.製薬会社の影響力の増大
8.DSMのインパクトの増大
9.精神科診断の激増
10.同性愛の脱病気化
が1945年以降に精神科で起きた10個の重大な変化とのこと
要は、精神療法が中心ではなって薬物療法が中心となる流れがあることと、操作的診断基準が隆盛してそれに伴って診断構造が変化している、とまとめられそう。
もしこれにいくつか付け加えるとすると、、、
:入院の短期間化 (「脱施設化」に含まれそうだけど)
:器質性精神疾患の診断力の向上
:てんかんの非精神科化
:スティグマの減少
:精神外科の衰退
:発達障害診断の隆盛
とかでしょうか。
以下はぼくが考えた「精神科で昔から変化なく今も続いているもの」です
:ECTの変わらぬ有用性
:バイオマーカーのなさ
:本人の素因による病気なのか、環境による病気なのか判断が困難なこと
脳の世紀と言われたり、オバマが脳の解明を推進すると宣言したりしました。
MRI,SPECT,PET等、「のうみそ」を調べるモダリティは増えています。
でも、その技術の進歩や興味の拡大の大きさに比べて実際の精神科臨床の進展はとても小さいように思います。従事している間になにか大きなイノベーションがあるのではと思って精神科医になったのですが、これまでのところは明らかな驚くようなイノベーションはないように感じています。
今後の10年での変化はどうなるのでしょうか。
(History of psychiatryという雑誌は1990年から季刊で出版され続けていて驚きました History of Psychiatry)